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2022.03.03
購買行動とは?9のモデル・フレームワークを解説【マーケター必読】
マーケティングにおける購買行動とは、消費者がなんらかの商品やサービスを購入するプロセスで取る行動のことを指します。企業のマーケティング活動において、消費者の心理や行動を分析することは重要なウエイトを占めます。この行動過程をいくつかのフローに分けた「購買行動モデル」と呼ばれるフレームワークが複数存在しており、マーケティングに従事する人々はそれらを元に自社のマーケティング活動に役立ててきました。
購買行動モデルを把握することで、消費者が商品やサービスと向き合う際の心理状態や検討フェーズにおける課題感がわかりやすくなり、その課題における手立てを講じるためのヒントになります。
この記事は、消費者の状況や心理状態に寄り添いながら商品やサービスを届けたいマーケティング担当者のために、購買行動の定義や、これまでに提唱されてきた代表的な購買行動モデルを9つ取り上げて解説していきます。
また、一般的な購買行動の定義ではなく、最先端の購買行動データの取得方法やより実践的な内容に興味がある方は、こちらの記事へどうぞ。
目次
・購買行動とは
- 購買行動プロセスの移り変わりと、提唱されるモデルの変化
-「消費者行動」との違い
・マスメディア時代の購買行動モデル
- AIDA(アイダ)
- AIDMA(アイドマ)
- AIDCAS(アイドカス)
・web時代の購買行動モデル
- AISAS(アイサス)
- DECAX(デキャックス)
- MOT
- 実務者に広く知られるきっかけとなった「ZMOT」
・SNS時代の購買行動モデル
- VISAS(ヴィサス)
- SIPS(シップス)
- ULSSAS(ウルサス)
・購買行動モデルを利用するうえで知っておきたいこと
- モデル間の共通項
- モデルでは捉えきれない購買行動の存在
・ まとめ
購買行動とは
購買行動とは、消費者が商品やサービスを購入する際に取る行動を指します。
消費者が一つの商品やサービスを知ってから実際の購入に至るまでには、一定の心理状態や行動を経ています。その一連の流れが分析され、さまざまなモデルとして提唱されています。これが一般に「購買行動モデル」と呼ばれ、企業のマーケティング活動などで利用されています。
リアル店舗での購買行動を解析してみたい方はこちらから(動画にて実際の解析を一部閲覧出来ます)
購買行動プロセスの移り変わりと、提唱されるモデルの変化
マーケティング研究や実践の中で、購買行動をパターン化した複数のモデルが提唱されています。消費者を取り巻く環境の変化に伴って、モデルも同様に進化を遂げてきました。
現在では、大きく「マスメディア時代」「web時代」「SNS時代」と3つの時代に分類されることが一般的です。この記事でもその分類をなぞる形でよく知られた購買行動モデルを紹介します。
「消費者行動」との違い
ちなみに、購買行動とよく似た言葉に「消費者行動」があります。いわゆるマーケティングの現場では、あまり厳密に区別されることがなく、意味としてはこの記事で紹介する購買モデルのことを指します。
ただし、場合によっては区別して使われることもあるので、認識が混ざることのないよう注意が必要です。
特に経営学やマーケティング研究における文脈での「消費者行動」は、消費者が特定の商品へのニーズを想起したり、検討したりする状態よりも前の心理や行動についても対象に含まれています。具体的には、属する文化圏、社会階層、世代など、その消費者の消費行動に広い意味で影響を与えている要因について分析する研究分野です。
また、この記事で紹介する各種の購買行動モデルも、この消費者行動の研究で提唱された「五段階の購買行動プロセス」という考え方に深い関連性を持っています。
消費者行動については別の記事で詳しい解説をしていますので、興味がある方はぜひそちらも読んでみてください。
マスメディア時代の購買行動モデル
ここからは、代表的な購買行動の9つのモデルについて解説していきます。
- AIDA(アイダ)
- AIDMA(アイドマ)
- AIDCAS(アイドカス)
- AISAS(アイサス)
- DECAX(デキャックス)
- MOT
- VISAS(ヴィサス)
- SIPS(シップス)
- ULSSAS(ウルサス)
上でも書いたように、購買行動モデルは、消費者が利用するメディアや生活環境によって、大きく3つの時代に分類することができます。
まずは、最も古くから提唱されてきたマスメディア時代の購買行動モデルです。
マスメディアによって、企業から消費者へ一方的かつ画一的に情報提供がなされていたことが背景にあり、代表的なモデルに1900年代初頭に提唱された「AIDA」「AIDMA」などが挙げられます。消費者の購買行動を把握する際の基本として今もなお知られています。
AIDA(アイダ)
購買行動モデルにおいて最も古典的な理論です。
現在知られている購買行動モデルの多くも、この理論を基本に考えられてきました。AIDAでは消費者が商品を認知してから購入するまでの行動を4つの段階に分けて分析しています。それぞれのフローが表す行動心理は以下の通りです。
- Attention(認知)…広告によって商品やサービスを知る
- Interest(興味、関心)…商品やサービスなどに対して興味を抱く
- Desire(欲求)…商品やサービスを欲しいと感じる
- Action(行動)…商品やサービスを購入する
AIDMA(アイドマ)
AIDAに続いて提唱された理論です。
広告で消費者のもとに届いた情報がすぐに購買に反映されるのではなく、一時的な記憶を経て、購入へと至ると考えられました。そのため、AIDAに「Memory(記憶)」が加わっています。これにより、いかに広告を消費者に印象づけるのか、その大切さが説かれました。
- Attention(認知)…広告によって商品やサービスを知る
- Interest(興味、関心)…商品やサービスなどに対して興味を抱く
- Desire(欲求)…商品やサービスを欲しいと感じる
- Memory(記憶)…商品やサービスを覚える
- Action(行動)…商品やサービスを購入する
AIDCAS(アイドカス)
AIDMAを元に考えられた理論です。
「Conviction(確信)」「Satisfaction(評価)」が足されていることから、欲求を確信に変える決定的な要素や、購入後の評価が重要である点が説かれました。
- Attention(認知)…広告によって商品やサービスを知る
- Interest(興味・関心)…商品やサービスなどに対して興味を抱く
- Desire(欲求)…商品やサービスを欲しいと感じる
- Conviction(確信)…商品やサービスが必要であることを確信する
- Action(行動)…商品やサービスを購入する
- Satisfaction(評価)…商品やサービスを購入した結果について評価する
リアル店舗での購買行動を解析してみたい方はこちらから(動画にて実際の解析を一部閲覧出来ます)
web時代の購買行動モデル
次に紹介するのは、1990年代以降、一般市民の間にもインターネットが普及したことで提唱されるようになった購買行動モデルです。
マスメディア時代のモデルが一方的な情報提供を基本としたものだったのに対して、web時代のモデルではインターネットの特性を反映して、消費者自らが情報取得を行うことを基本に考えられています。情報の非対称性が解消されるに伴い、「AISAS」「DECAX」などのモデルが広まりました。
AISAS(アイサス)
2004年に電通が提唱したことで広く知られている理論です。
大きな特徴は「Search(検索)」「Share(共有)」といった消費者の自発的な行動を取り入れたモデルである点。
商品やサービスの情報を能動的に取り入れ、判断できる時代が訪れたため、より消費者視点に立った商品・サービスづくりが大切であると説かれました。
- Attention(認知)…広告やメディアよって商品やサービスを知る
- Interest(興味・関心)…商品やサービスなどに対して興味を抱く
- Search(検索)…商品やサービスなどの情報をインターネットで検索する
- Action(行動)…商品やサービスを購入する
- Share(共有)…商品やサービスを購入した結果についてインターネットで共有する
また、ここから派生したモデルで、2015年には「Dual AISAS」というモデルも提唱されました。これはSNSの発達における拡散や共感などの文化を加味したもので、消費者同士の情報交換の重要性が増していることが分かります。
DECAX(デキャックス)
コンテンツマーケティングが広く浸透したことで生まれた理論です。
企業からの発信を受け取るのみではなく、消費者自らがWebメディアやニュースサイトなどから商品を「Discovery(発見)」することから始まるプロセスであることが特徴的。
また、「Engagement(関係構築)」において、企業と消費者の関係構築の重要性についても説かれています。消費者の知りたい情報を届けることで生まれる長期的に見た企業や商品の信頼性が、購入の意思決定においては重要であることがこの理論を通してわかります。
- Discovery(発見)…Webメディアやニュースサイトで商品やサービスを発見する
- Engagement(関係構築)…情報提供によって企業と消費者の関係構築を行う
- Check(確認)…得られた情報の信頼性を確認する
- Action(行動)…商品やサービスを購入する
- eXperience(体験と共有)…商品やサービスを体験し、その結果についてインターネットで共有する
MOT
MOTとはMoment of Truthの略語で、日本語では文字通り「真実の瞬間」と訳されます。
1990年に刊行された『真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか』にて触れられたマーケティング理論で、企業と消費者が接点を持つ瞬間がマーケティングにおいては重要であることを説いています。
同書では、スカンジナビア航空で働く従業員が搭乗者と接点を持つ「最初の15秒」が、企業やブランドへのイメージを決定すると触れています。ここから各企業における「MOT」が強く意識されるようになりました。
実務者に広く知られるきっかけとなった「ZMOT」
従来、MOTを意識したモデルとして「FMOT」「SMOT」「TMOT」の3つの理論が広まっていました。そこに登場したのが、2011年にGoogleが提唱した「ZMOT」です。これは、「消費者が店舗を訪れる際にはすでに購入するものを決めている」とする理論で、web時代の行動心理を的確に捉えたことで注目を浴びました。
これまで紹介した理論はどれも消費者が購買に至るまでのフローをモデル化したものですが、「ZMOT」が伝えるのは消費者の決定の瞬間です。時間経過の流れではなく、その中のとある点に意識を向けた理論であることが他のモデルとは異なるポイントです。
リアル店舗での購買行動を解析してみたい方はこちらから(動画にて実際の解析を一部閲覧出来ます)
SNS時代の購買行動モデル
最後に紹介するのは、TwitterやInstagramをはじめとするソーシャルメディアが普及したことによる、消費者同士が相互に情報発信を行う文化を背景にした購買行動モデルです。2010年以降に提唱されたものが多く、現在の消費者心理を反映しているといえます。
消費者が自ら情報収集を行うのはもちろんのこと、消費者間での共感や拡散によって情報と出合う、企業の信頼性を高めるなどの文化が形成されるようになりました。
VISAS(ヴィサス)
SNSによる発信を通して生まれる購買活動をまとめた理論です。消費者の購買欲求が生まれていない商品やサービスであっても、SNSでの口コミを偶発的に見かけることで共感や行動につながる点が大きな特徴。VISAS はSNSマーケティングを考える上での基本理論としても知られるようになりました。
- Viral(口コミ)…SNSでの口コミによって商品やサービスを知る
- Influence(影響)…発信者や口コミによって消費者が影響を受ける
- Sympathy(共感)…発信者や商品の情報に共感する
- Action(行動)…商品やサービスを購入する
- Share(共有)…商品やサービスを購入した結果についてSNSで共有する
SIPS(シップス)
SNSから知った情報に共感することで消費者行動が始まることを提唱した理論です。
SIPSの特徴は、プロセスのゴールが必ずしも購買ではない点。購買だけではなく消費者の情報発信やイベント・コミュニティへの参加などと広く捉えて「Participate(参加)」と提唱されているので、企業と消費者の関係構築にも応用できます。
- Sympathize(共感)…発信者の情報や意見に共感する
- Identify(確認)…得られた情報の信頼性を確認する
- Participate(参加)…消費者が行動を起こすことで販促活動に参加する
- Share&Spread(共有・拡散)…参加したことを共有・拡散する
ULSSAS(ウルサス)
2019年にホットリンクによって提唱されて認知度を高めた、最も新しい購買行動モデルです。
ポイントは、UGCによって生まれる認知に着目している点や、検索行動にもSNSを活用している点。購買に至るまでの多くがSNSによって行われている点が現在の潮流に合致しているといえます。
また、これまでに紹介した多くのモデルと異なり、一直線の流れではなく渦巻状の構造を取っています。企業の広告費や人件費などを大きく投下することが難しい場合でも、ユーザーの投稿とSNSの拡散力により自走するフローが組まれる点も特徴です。
※UGC:User Generated Contentの略で、一般ユーザーによって作られたコンテンツを指します。
- UGC(ユーザー投稿コンテンツ)…消費者の投稿によって商品・サービスを知る
- Like…SNSで気になる投稿に「いいね!」をする
- Search 1(SNS検索)…SNSで商品・サービスを検索する
- Search 2(Google/Yahoo!検索)…検索エンジンで商品・サービスを検索する
- Action(行動)…商品やサービスを購入する
- Spread(拡散)…商品やサービスを購入した結果についてSNSで拡散する
購買行動モデルを利用するうえで知っておきたいこと
モデル間の共通項
ここまで多くのモデルを紹介しましたが、根幹には共通する考え方があります。
それは、大きくいうと「特定の商品(ジャンル)の存在を知る」、「比較する」、「購入する」という流れになっていることです。
この礎には、記事前半で紹介したAIDAなどの古典的な購買行動モデルや、消費者行動の研究の中で提唱された「五段階の購買行動プロセス」などの存在があります。
モデルでは捉えきれない購買行動の存在
また、現代はスマートフォンですべての購買行動が完結する時代になりました。そのため、ここまでに紹介したモデルでは説明できない点があることも知っておきましょう。
まず1つが、それぞれのステップを踏む順番です。
検索で企業サイト閲覧をしたあとに、SNSでユーザー投稿を確認するパターンなど、消費者が自由に情報収集をできることになったため、ステップの順序が変わることも少なくありません。
もう1つのポイントが、オンラインでの購買行動です。
たとえばSNSのライブ配信機能を使ったライブコマースなど、上で紹介したモデルに当てはまらない“瞬間的な購買行動”も大きなトレンドです。インフルエンサーやKOLと呼ばれる人たちが、検索結果やUGCを超越して消費者の購買を促している例だといえます。
どのモデルを応用するにせよ、こうした現状について知った上で実際のマーケティング施策を考えていくことが重要です。
※KOL:Key Opinion Leaderの略で、消費者の購買意志決定の際に強い影響力を持つ、なんらかの専門性を持ったインフルエンサーを指します。
リアル店舗での購買行動を解析してみたい方はこちらから(動画にて実際の解析を一部閲覧出来ます)
まとめ
購買行動の定義と、提唱されているモデルについて紹介しました。購買行動モデルは時代の変化に合わせて移り変わっているため、まずはその根底にある考え方や理論を理解することが正しいマーケティング活動の一歩になるはずです。
なお、本コラムで記載したような一般論だけでなく、購買行動の具体的な活用事例などに興味のある方は、下記コラムを参考にされてください。
【今!読まれています】購買行動データの調査・分析方法4選!最先端の画像AI技術で競合に勝つ方法を徹底解説
今後もソーシャルメディアやSNSを取り巻く環境は随時変化するので、それに即した購買行動モデルの登場も大いに考えられます。企業や商品に合わせて、どういった考え方を採用するのかを常に考え、消費者と向き合う必要性が今後も求められていくことでしょう。
購買行動のうち、もっとも売上に近い状況の一つが、店舗内で商品を見ている瞬間です。わずか数秒の間でも、消費者は棚の前でさまざまな思考をめぐらせ、購入する商品を検討します。ここでもスマートフォンで情報収集をしながら、あるいはPOPや商品パッケージから情報を得たり、あるいは来店前に見た広告が影響を与えている場合もあります。
コニカミノルタでは、この棚前での行動を解析するための「Go Insight」というサービスを提供しています。小売店に設置したカメラを活用し、消費者の行動データ取得から解析までワンストップで行うことができます。
棚前の行動を解析することは、購買行動をより理解するための大きなヒントになるため、ぜひマーケティング活動の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。
Go Insightで購買行動を改善した事例を見てみたい方はこちらから
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