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2021.06.15
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エンジニアが本当に働きたい会社・組織に必要とされるもの コニカミノルタマーケティングサービスのこれから【第3回】KMMSに期待すること
コニカミノルタのグループ会社として、サイエンスの力で日本企業のマーケティング部門のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現していくコニカミノルタマーケティングサービス(KMMS)。コロナ禍において、急速に需要の増えたマーケ、セールス部門のDXニーズに応え、業績を2019年度の2倍に伸ばしている。さらなる飛躍を目指して、及川卓也氏に開発体制の構築のアドバイザーを依頼。及川氏の提唱する「ソフトウェア・ファースト」を実現すべく、弊社社長の岡本と対談を行いました。3回目のテーマは、これからのKMMSの課題と期待されることについてです。
目次
プロフィール
岡本賢祐(おかもと けんすけ)
2001年コニカミノルタ入社後、ヘルスケア部門の国内新規サービスの医療IT部門を経て、アメリカの販社へ駐在し、会社運営全般を経験。
帰国後は中国での新サービス立ち上げなどに従事し、新事業のマーケティングサービス事業部へ配属。海外のマーケティングサービス会社を買収後、2015年、日本法人としてコニカミノルタマーケティングサービス株式会社を立ち上げ、17年より22年3月まで代表取締役を務める。
Tably株式会社
代表取締役 及川卓也(おいかわ たくや)
MicrosoftにてWindowsおよびその関連製品の開発を担当した後、Googleに転職し、ウェブ検索やGoogleニュースのプロダクトマネジメントやGoogle Chromeのエンジニアリングマネジメントに従事。その後、Qiitaの運営元であるIncrementsに転職。独立後、プロダクト戦略やエンジニアリング組織作りなどで企業への支援を行うTably株式会社を創業。
「いい会社したい」という主体性を持つ社員が多い
岡本
手前味噌ですが、KMMSは実験的でユニークな会社だと思っています。大企業の子会社ではありますが、その意識は社員の誰にもなく、大企業にはないスピード感と成長機会を内包した、スタートアップ型の組織だと認識しています。
人材も独自に集めており、現在100名ほどの組織になりましたが、本社のプロパー社員は私を含め3名しかいません。設立当初から自由かつ、平等であり、個人の成長を重んじる会社文化を築くことを理想としてきました。そして、今後はエンジニアにとって成長をコミットできる会社になりたいと考えています。国内外のベンチャーや、大企業も経験され、アドバイザーも手掛けていらっしゃる及川さんから見て、KMMSに期待していることがあれば教えてください。
及川
御社には、「いい会社にしたい」と思っている社員が多いと感じています。ミーティングも受け身じゃないですし。我々のような会社にコンサルを頼んでくる大企業さんの場合、「具体的にどうすればいいですか?」とか、「おっしゃる通り進めていきますから、かっちりプロジェクトの工程表を作って、それを引っ張っていってください」と直截的に言われることも多いんです。
決してそれが悪いわけではありませんが……。あくまでもコンサルが主体ではなく、中の人たちが主役であって、その人たちに気づきを与える、一緒に考えていくやり方を取っています。御社にも「私はこう思っています」という項目を伝えて、それを元に社員の方が一生懸命一緒に考えてくださっている。つまり、KMMSさん側が主体的に動いてくださっているのが嬉しいです。そして今の組織、人事の仕組みもありますが、「これで100点」と現状に対して満足せず、どんどん改善していこうとしているのもいいですね。
岡本
弊社とのやりとりで印象に残っているエピソードなどはありますか?
及川
今後の採用計画を作る際、正社員での採用と、将来的にそのポジションが必要不透明なので、業務委託やフリーランスで関わってもらうポジションの話をしていました。「私がこうであろう」と思うところはあったとしても、決めるのはKMMSの人です。それを可視化したときに見えてきたものがあったんですね。どうするのだろうと思ったら、業務委託は何人といういったんの結論を、「ここは正社員を入れないとダメじゃないですか」ということを気づかれて、自分たちで指摘されました。岡本さんもすぐにそれに同意してくれて、その議論を受け入れてくれたことがありました。
社長である岡本さんが整理されて持ってきたものを、忖度するとか、既成事実になっているということもありませんでした。業務委託と正社員の比率はポジションによっても違いますし、会社ごとの考え方によっても違いますので、あまり個人の違和感は伝えませんでした。ただ、それ以前の何度かのミーティングで、「正社員を適正に配置して育成しなければいけませんよね」、という話が出ていたので、自然とそこに話が進んだのはいいことだと思いました。そんなふうにKMMSには風通しの良さを感じます。岡本社長と社員との関係もとてもフラットな感じですね。フラットだけれど、言葉が丁寧で、上司と部下の関係、他の部署だからとすごい遠慮している感じになっておらず、いい企業だなと感じました。
チームの中で議論して進める体制が働きやすさを生む
岡本
KMMSがエンジニアにとって、どれくらい働きやすい環境になっているかなどを、現状についての具体的なご意見を頂戴できれば。
及川
そうした環境をまさに作ろうとしていると認識しています。私自身が十分な情報を持っていないので憶測も入りますが、エンジニアの意向がそのまま反映されるような開発ができているのかなと思います。使いたい技術や、今後の方向性などの枠組みが出てくるんじゃないかな、と。誰か一人がその枠組みを一方的に決めるのではなくて、ちゃんとチームの中で議論して進めていく体制を取られているように思います。その意味ではエンジニアだけでなく、みなさん働きやすそうだと感じます。
岡本
よく弊社の深いところまで見ていただき、ありがとうございます。及川さんから見て、弊社にまだまだ足らない点、ここをもっと改善してもらいたいというご意見があれば、ぜひ伺いたいです。
及川
改善点があるから、私に依頼が来ていると思ってます(笑)。真面目にいうと、まだテクノロジーの会社にはなっていない状態です。岡本さん以下、「テクノロジー企業にしたい」という理想を実現するために支援して行きたいと思います。私なりの言葉で言えば、「テクノロジーというよりサイエンスをどう考えるか」です。KMMSさん自身が「マーケティングをサイエンスする」ことを目指しているけれど、「自分たち一人ひとりにとってサイエンスって何だろう」について、もっと考えていただきたい。具体的に日々使うものとしては技術になりますが、技術の会社、サイエンスの会社としてどういった技術を活用していくのかというところを、一人ひとり、そして部署ごとにもっと考えてもらえるといいのかなと思いますね。
昨年12月から今年3月にかけて、テクノロジー企業に必要なエンジニア、プロマネ、カスタマーサポートなどの部門のところの人事設計、組織設計のお手伝いをしていて、そこからプロダクトもみてくださいということになり、私もたまに入ってますが、基本的には小城さん(「プロダクトマネジメントのすべて」の共同著者)に引っ張ってもらっています。
クライアントに入り込んでマーケティングをサイエンスするということは、すでにやっていらっしゃる。今後必要なのは、そうしたプロダクト、もしくはサービス化を進めていく、サービス化ができているところは、より成長させることが必要になっています。これをやるには私が手伝っている「人と組織」について、人材を集め育成し、組織化することが必要なのと、人が集まりつつあり、育ちつつある中でそのサービス・プロダクトをどう生み出し育てていくかが大切になっています。これはプロダクトマネジメントという領域ですが、そちらもお手伝しています。
組織を作りながらプロダクト戦略を作り、それを実施して、よりコンサル的なことをやっている部隊と、よりプロダクトサービス化する部隊とこれを両輪になって回されていく形が理想です。それを目指されていると思うのですが、より回っていくようになるのが必要ですから、それを今、私もお手伝いしているところです。
個人の成長と、組織の成長が並列化するといい
岡本
ありがとうございます。傾聴すべきご意見として、社内でも共有していきたいと思います。最後になりますが、エンジニアが個人としての成長を実感してもらえるための組織のあり方についてもアドバイスをいただければ幸いです。
及川
個人の成長と、組織の成長がアライン(並列化)されているのが一番いいんですよね。例えば、若いエンジニアはできないことだらけですから、幅と深さという意味で色々な技術要素を学び、さらに、業務で必要となるところを深く学んでいくことが必要です。ただ、しばらくすると飽和状態になってしまう可能性があります。つまり、技術者としてある程度成長してしまうと、今持っている技術だけで、事業への貢献ができる形になってしまうんです。望ましいのは、事業がさらに高みを目指していくことになっていて、そこに常に追いつき、またより事業課題の難易度が高いものを設定して、それを解かなければならない状態にもっていく。そして事業の成長に技術者が追いついていく、それで技術者が成長して、事業も成長する、またその逆も然りです。
技術者が成長していけば、その技術を活用してこんな事業に展開できるんじゃないかという形も考えられます。エンジニアの成長がそのまま、組織・事業の成長に繋がっていけばいいのではないかと思います。
これは、KMMSさんでも実施していますが、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)をしっかり決める。職種を定義して、この職種はこういったスキルを持ち、それを実際に業務に生かして、成果を出して欲しいと決めるわけです。一方で、組織として役割分担をきちんと決めれば、それだけで事業が回るわけではなく、当然あいだに抜け落ちるところがありますし、オーバーラップするところもあります。役割分担として自分のことを全うしつつ、途中に落ちる事柄を積極的に拾いにいったり、あえてオーバーラップする部分をよしとするような形を取ることも必要です。一番大事なのは個人の成長でもあるけれど、組織自身が成長して実際に成果を出し続けることです。そこで求められるのは、「プロダクト志向」と呼ぶものです。それは、メンバー全員が自分の持分を守りつつも、自分が作っているプロダクトの高い誇りを持ち、それを本当に価値のあるものにする、顧客に喜んでもらえるものにする、その結果ちゃんと収益を上げるという形に持っていけるよう常にメンバーが考えているような組織です。その状態を目指すのが、ベストではないでしょうか。
自社の看板がなくても勝負できる人材を目指そう
岡本
なるほど、我々が目指すべき組織の方向性がとてもよくわかりました。個人の成長という点では、何かアドバイスはありますか?
及川
個人の成長という意味では、ぜひお伝えしたい言葉があります。トヨタの豊田章男社長が、2019年1月の念頭挨拶で社員にこんなスピーチをしました。「トヨタの看板がなくても、外で勝負できるプロを目指してください」。トヨタマンとして、トヨタを出ても一流の人間になってほしい、外に出ても通用する人間がトヨタに対して働いた時が一番強くなるとおっしゃっていたのですが、私もその考えに全面的に同意します。
常に自分の人材市場での価値を考える。KMMSを辞めて、どこへ行っても通用する、もしくはどこからでも来てほしいと言われるような人材を目指してほしいです。その状態で、今いる自分の組織にどうコミットするかを考えるというのが、すごくいいんじゃないかなと思います。
そのためには、社内にとどまるのではなく、外のコミュニティと繋がりが大事です。技術者コミュニティやオープンソースプロジェクトなどに積極的に参加したり。同時に発信もしてほしいです。ツイッターでもブログでもイベントでのライトニングトークでも、セッションを一つ担当させてもらうでもいいので。最初はなかなかできないので、小さいところからでいいと思います。アウトプットを意識することによって、インプットの質と量を高める形が最高です。例えば、先に1カ月後のイベントで話すと決めたなら、そこに向けて頑張るので、必然的にインプットが高まると。そうした流れを意識するといいと思います。
岡本
様々な視点から、参考になるお話をいただきありがとうございました。とても充実した時間を過ごすことができました。これからもよろしくお願い申し上げます。