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2021.09.02
【ウェビナー開催レポート】 Withコロナ時代 – リアル店舗のDXでショッパー行動を大予測! ~ショッパー×メーカー×小売の3者の視点から購買行動の変化を読み解く~(後編)
2021年6月24日に開催した本ウェビナーでは、昨年6月に開催したニューノーマルのショッパー行動の変化を読み解くウェビナーの第二弾として、この1年でリアル店舗の購買行動はどう変わったのかや実際のFactデータの変化や顧客の心理面での動向変化を踏まえつつ、Withコロナ時代のショッパー行動と今後の展開についてお話させていただきました。後編では第四部のトークセッション部分をご紹介させて頂きます。
※本レポートは要約版となります。当日のグラフィックレコーディング含めた詳細をご覧になりたい方は、ぜひアーカイブ版のご視聴&資料のダウンロードをお願い致します。
<この記事を読んでいただきたい方>
・店頭マーケティングで成果を出したい マーケターの方
・ショッパー行動からヒントを得たい 商品企画・開発担当の方
・店頭のデジタル施策を推進する 小売業のDX担当の方
後編では第4部のトークセッション部分をご紹介させて頂きます。
第1部から第3部までのサマリはこちら(前編)より御確認を頂けます。
第4部 トークセッション
【モデレーター】
コニカミノルタマーケティングサービス株式会社
執行役員 ショッパーデータプラットフォーム事業部長
齊藤 宏
外資系消費財メーカー2社で20年にわたりショッパーマーケティングと能力開発に従事。特にカテゴリーマネジメントの分野では大手小売業との協働取り組み体制の確立と分析スキーム作りに貢献した。またアプリケーションの開発と運営をリードし社内能力開発ツールをデジタル化した経験あり。
コニカミノルタマーケティングサービス(株)では、メーカーと小売業のニーズに即したデジタルマーケティングとDXのソリューション開発とコンサルティングを推進。 日本消費者行動研究学会会員。
最後にモデレーターとして弊社の齊藤を交えてのトークセッションと、視聴者の皆様から頂いた質問に回答させていただくQ&Aを行いました。
■なぜピックアップタワーを辞めてしまったのか?
齊藤
去年お話させていただいてから1年、私たちの生活も変わって、来店から販売のストレスを感じるのは、海外に比べて小売店様のDXが推進されていないからではないかというお話もありました。
そんな中、海外で普及していて、日本でも注目されているものがどういったものか考えていきたいと思っています。
まず、ウォルマートさんがピックアップタワーを辞めてしまったのはなぜでしょうか?
郡司様
まず、ピックアップタワーがどういうものかからお話すると、オンラインで注文した商品を店舗で受け取るものです。折りコン(折り畳み式のコンテナ)のようなものの中に注文した商品が詰められていて、タワーにバーコードをかざすと自分の注文した折りコンが出てくるというもので、お客さんにとってはかなり便利なものです。
お店の人は注文が入ったら、商品を折りコンに詰めて、タワーに収納しなければならないのですが、それでは間に合わないくらいの注文が入りました。
先日、ウォルマートでBOPISのピックアップをしている店員が14万人を超えたと発表がありましたが、これは百貨店最大手のメイシーズの店員よりも多い数です。
現地に行った人が撮った店内の動画を見ると、お客さんよりもピックアップする店員の方が多く、常にピックアップする人が店内を歩いている状況でした。
齊藤
それはすごい数ですね!
郡司様
それだけの人数がいてもピックアップが間に合わないくらい注文が入り、タワーの収納力にも限界があるので、レジを一部封鎖して、封鎖したレジの後ろにどんどん商品を積み上げていくといった事態になり、一旦中止になりました。
ウォルマートでは他に廃止したものがあって、それが「棚スキャンロボット」です。店内を循環して棚の状況を把握するロボットで、当初1,000店舗入れる計画で500店舗まで入っていたんですがやめてしまいました。
なぜかというと、常に店内をピックアップの店員が歩いているので見ればわかるし、ピックアップの邪魔になります。
BOPISのリピート率は非常に高く、コロナがなくなっても継続するだろうという判断でロボットの方がクビになりました。
齊藤
POCが大事だというお話もあったと思うのですが、まさにウォルマートさんはPOCを高速回転でやって、結果が出るもの、出ないものを判断して前に進めているということですよね。
郡司様
ウォルマートはPOCと言えるレベルではないですよね。500~1,000億くらい投資していても、いらないと判断したら辞めちゃうのがすごいですよね。あとは、辞めたことを辞めたと言えるのもすごいです。
齊藤
もう既に実装ですよね。ありがとうございます。
■売り場での新たな動き
齊藤
そういえば、先程牛堂さん何か持ってきていらっしゃったような?
牛堂様
はい。先程パッケージの話をさせていただいたんですが、こちらの大袋パッケージを見て頂きたいのですが、キットカットに新しい商品がでまして、それが「全粒粉のビスケット」です。なにがすごいかと言いますと、”ゆるい“んです。
パッケージの裏側にイラストがありまして、ゆるく食べるシーンが訴求されているんです。今までは特徴を出して尖らせようという流れだったのが、ちょっとゆるい方になっています。
齊藤
日常を無理なく充実させるといったことにも繋がっているんでしょうか。
牛堂様
そうですね。あとは、単体では目立ちにくくても、店頭で他の商品と合わせて見ると目立って見えると、ラインナップの観点も考えられていると思います。
齊藤
パッケージもビニールから紙に変わっていますよね。弊社の調査でも、ラベルレスの商品の調査も増えてきて、意識が変化してきているのかなというのも感じます。
持続可能な社会に繋げるという意識は安定してあるという話もありましたが、郡司様、小売店様でもSDGsの観点を持った取り組みは増えてきている印象ですか?
郡司様
どうしても株主や社外取締役の声もあって対応せざるを得ないという点もあるのかなと思います。
あと製造小売会社の観点で言うと、日本よりも海外で売るパイの方が大きかったりするので、そのあたりを重視しているか、軽視しているかで差は大きく出てくると思います。
齊藤
持続可能な社会、SDGsへの取組みなど、今後世界を見据えた会社が伸びてくる可能性もありそうですね。
郡司様
そうですね。もうちょっと小売りの方は極端なことをやってもいいと思います。
例えばこういった、紙のパッケージの商品しか置かないとか。洗剤や柔軟剤の本体は置かないとか。
メーカーさんはどうしてもブランドスイッチさせたいので本体を安くするんですけど、お客さんの声を聞いていると詰め替えの方が高いので、罪悪感を抱きながら仕方なく本体を買っているという声が多くて。
それってブランドスイッチしているわけではないので、そんな無駄なことをするなら詰め替えだけ置いてもいいんじゃないかなと思ったりします。
齊藤
なるほど。これからは、ショッパーの方の意識に合わせて、開発したり、売場を変えていく必要があるのかなと感じました。
■十分な解析を行うのに必要なデータ数は?
齊藤
それでは、ここからはアンケートの質問を見ていきましょうか。
Go Insightについての質問ですが、「カテゴリー毎にお客様の立寄率も異なると思うが、十分な解析を行うのに必要なデータ数は?」とあります。松塚さんいかがでしょうか。
松塚
こちら、よくお問い合わせいただく内容です。調査の内容やカテゴリーのコンバージョンにもよるのですが、弊社として推奨しているのは立寄数3,000~4,000人分となります。こちらが十分な考察や深堀りができるデータの数だと考えています。
齊藤
3,000~4,000人分のデータを取得するために、調査期間を長くしたり、短くしたりして対応しているということですね。
松塚
まさにそうです。例えば、飲料カテゴリーで大きな店舗で調査すると1日で3,000人のデータが集まる場合もあるので、店舗選定、期間設定を調整しております。
平日と休日での売れ行きの違いを見たりもしていますので。
■コロナ禍でのデジタルサイネージの効果
齊藤
続いての質問ですが、こちらちょっとおもしろそうですね。
「全国的にデジタルサイネージの取組みが進んでいるが、コロナの影響で店舗滞在時間が減少していると聞く。コロナ禍でデジタルサイネージの効果はあるのか?」とあります。こういった調査もあるんですか?
松塚
今、デジタルサイネージに関する調査は非常に増えてきています。
サイネージの付け方にもたくさん種類があり、今まで通りの棚に、従来からあるタブレット型の端末が付いているだけとなると、遠目から見ても視認しにくいですし、あまり効果がないとった調査結果が多くなっております。
一方で、棚全体を大きく変えて、遠くから見ても視認可能なシェルフサイネージと呼ばれるサイネージを付けると非常に効果が出ているという調査結果も出ています。まず、立寄者がすごく増えます。立寄者数が増えると、接触、購入が増えるので、棚の一部をどうするかよりも、棚全体をどう作っていくのかが重要だと思います。
齊藤
郡司様にお伺いしたいのですが、海外もしくは日本でサイネージに力を入れている小売業様っていらっしゃるんでしょうか?
郡司様
そうですね。特定の小売業で言うと、日本だとトライアルさんですかね。かなり積極的に手がけられていると思います。
サイネージのメディアとしての特性は、強制視認性なんですよ。見ようと思ったわけではないのに、通りかかったら目に入る。なので、基本的にはサイズと見せる場所というのが大事になります。
あともう1点はコンテンツです。先程話が出たシェルフサイネージなんかは、まさにコンテンツ次第です。説明次第で売れるかどうかは変わります。
例えば、試食ができないから代わりにサイネージを置こうという話もよくある話ですが、おそらくあまり効果はないと思います。目的を満たさないというか、メディア特性は考えなければならないと思います。
松塚
これはコロナ前からなのですが、滞在時間がメーカーの方が想像されている以上に短かったということもあります。30秒程度の動画を流そうとサイネージを導入したけれど、そもそも滞在時間が15秒程度だったといったケースもあるので、立ち止まらせるのが目的なのか、買わせるのが目的なのかといったコンテンツの目的も踏まえて調査設計することが多くなっています。
郡司様
全員は見てくれないんだけれど興味を持った人にきちんと説明しましょうというコンテンツなのか、多くの人に知ってもらうためのコンテンツなのかで時間も違ってきますよね。
牛堂様
YouTubeでも最初の5~10秒くらいは強制的に見させられますし、最初の数秒でまずは心をつかむような工夫も必要かもしれませんね。
郡司様
Go Insightをせっかく使うんだったら、コンテンツを6秒、15秒、30秒などで流してみて、どうエンゲージが変わるのかABCテストをしてみたりしてもいいかもしれません。
ツールはあくまでも測定するものです。商談についていくとよく言われますよね、これ入れたらいくら売上上がるの?って。それを考えるのはあくまでもメーカー、小売りの方だと思うので、データを使ってのアイデアは自分ごとで考える必要があると思います。
■今販促物に求められている要素とは
齊藤
ありがとうございます。もう一つくらい質問を見てみましょうか。
「販促物の簡素化とあるが販促物に今求められている要素は?」ということですが、どんなものが考えられるでしょうか?
牛堂様
アイキャッチシールの調査をさせていただいたことがあるんですが、この商品の特徴は何か、USP(ユニークセリングポイント)を教えて欲しいという声が結構多かったです。色々書きたいのは分かるんですが、商品のウリを分かりやすく書くのが大切だと思います。
齊藤
ありがとうございます。そうですよね、たくさんのことが書いてあるよりも、ビシッとその商品の特性が書いてある方が分かりやすいですよね。それをデータで検証してみて、進めていくのが良いということですね。
最後に、今年の秋以降の流通様、メーカー様の今後の潮流といいますか、こういう風に時代が進んでいくんじゃないかという予測について伺っていきたいと思います。
牛堂様
メーカー様視点だと、今パッケージの裏面がおもしろくなってまして、裏面に食べ方やキャンペーンなど色々なことが書かれています。
最近一番面白かったのは、カルビーさんのポテトチップスのパッケージを折りたたむとQRコードが出てきて、そこからキャンペーンに応募するという、まさかのパッケージを折りたたんで使うという発想です。
店頭で選ばれるのは当然大事なんですが、買われた後にお客さんとどうコミュニケーションをとるか、満足度を高めるかという部分にまで注力することが、今後大事になってくると思います。
齊藤
郡司様はいかがでしょうか。
郡司様
これまでは「接客=レジ」が小売の常識だったのですが、3年前初めてAmazon Goに行ったときに、レジはない方がいいなと思いました。レジでの接客は店員側からすると苦痛でしかない、しかも今はビニールシート越しに会話をしなければならないストレスもあり、「接客≠レジ」だと常々思っていて、その流れは加速していると思っています。
僕はドラッグストア出身なので、レジって接客だよねと思っていましたが、スーパーのお手伝いをしていると意外とそう思っていない。お客さんの方もそう思っていないというところから、挨拶やお釣りの渡し方などでクレームが入るので、リスクでしかないなと。
接客が必要なシーンでしっかり接客できるシーンが用意されていれば良くて、それがオンライン接客かもしれないし、メーカーさんが直接チャットなどで回答してもいいですよね。なので、決済と接客は別にした方がいいんじゃないかと思っています。
ドラッグストアなんかでは、レジで風邪薬の説明をしたいのに後ろにレジ待ちの列ができていて説明できないといったこともよくあって、分離した方がいいと思います。
齊藤
なるほど。接客なら接客でお客様のニーズに応えられるような方が出てくるということですよね。
郡司様
そうです。オンラインで、距離の壁もなくなってきていますし。接客が必要な時だけ接客すれば良いんです。
齊藤
今年以降、コロナが明けての世の中の流れや、小売業の皆様、メーカーの皆様の動きが見えてきたのかなと思います。本日はありがとうございました。
■編集後記
今回は想定以上に多くのご質問を頂き、改めてコロナ禍の消費者動向に対する関心の高さを伺い知ることが出来ました!
残念ながらウェビナ―内で全ての質問にお答え出来ませんでしたが、本ウェビナーが「コロナ禍の消費者動向はこれからどのように変化していくのか?」という大きな問いの一考になりますと幸いです。
長文となってしまいましたが、最後までお読み頂きどうも有難うございました。
弊社ではショッパーの行動データを活用したコンサルティングサービスを手掛けております。ご質問やご相談事項等ございましたら、是非お気軽に下記リンクよりご連絡をお願い致します。