2024.12.10

コロナ後の日本の消費者行動と価値観の変化

コロナ後の日本の消費者行動と価値観の変化

ここ数年で消費者の価値観や行動が大きく変化し、従来の消費者理解や販売戦略が通用しなくなってきたと感じている方も多いのではないでしょうか? この記事では、コロナ禍を経て形成された新しい消費行動の特徴や、物価高の中での消費者心理の変化、さらには世代ごとの特徴的な傾向までを、最新のデータとともに解説していきます。 これらの知見を活用すれば、現代の消費者により響く商品開発やマーケティング施策の立案に役立てることができます。

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目次

消費者マインドの主要な変化
 - 物価高騰への対応と価値観の変化
 - デジタル化の加速と購買行動の進化
 - 生活満足度とプレミアム消費の共存
消費者マインドの主要な変化
 - オンラインとオフラインの融合
 - コスパ重視と賢い消費選択
 - サステナビリティ意識の高まり
世代別の特徴的な消費傾向
 - 若者の「所有より利用」志向
 - シニア層のデジタル活用の進展
 - 女性の慎重消費傾向
ビジネスへの示唆
 - ロイヤル顧客とコミュニティの重要性
 - マルチチャネル戦略の必要性
 - 価値提案の再設計
まとめ


消費者マインドの主要な変化

物価高騰やデジタル化の加速、コロナ禍を経て、日本の消費者の価値観と行動は大きな転換点を迎えています。

一見相反する「節約志向」と「プレミアム消費」が共存し、経済的メリットを重視しながらも、自分にとって価値のあるものには積極的に投資する選択的な消費スタイルが定着しつつあります。

その背景にあるのは以下の点です。

  • デジタル技術の進化による情報収集や購買行動の変化
  • コロナ禍での生活様式の見直し

があります。

以下では、この数年間で顕著となった消費者マインドの変容について、3つの重要な観点から分析していきます。

物価高騰への対応と価値観の変化

最近の消費動向調査によると、全カテゴリで消費金額の増加が見られるものの、その主な要因は物価高騰にあることが明らかになりました。

特に食料品や日用品などの生活必需品において、半数が物価上昇を消費増加の理由として挙げています。

消費者の価値観も変化しており、約3割が「節約と贅沢のメリハリをつける」「コストパフォーマンスを重視する」と回答しているのが特徴的です。

注目すべきは、この傾向が世帯年収600万円以上の高所得層でも顕著になってきている点です。

若年層では貯蓄・投資志向が強く、不透明な将来への備えを重視する傾向が見られます。

このような状況下で、消費者の購買行動は店舗中心ながらも、経済的メリットを重視する傾向が強まっています。

企業は、変化した消費者の価値観やライフスタイルに即した商品開発やサービス提供が必要です。

デジタル化の加速と購買行動の進化

デジタル化の進展により、消費者の購買行動は大きく変化してきました。

2000年代にはインターネットの一般化によって、消費者は自ら情報を検索し、商品評価を共有できるようになり、双方向的なコミュニケーションが生まれました。

2010年代のスマートフォンとSNSの普及は、さらなる変革をもたらすことになります。

SNSでの共感や口コミが購買行動の重要な要因となり、企業のコンテンツマーケティングも活発化しました。

近年では、ECサイトでの突発的な購入を示す「パルス型消費」や、フリマアプリでの転売を前提とした「SAUSE」など、新たな消費行動も出現しています。

購買行動は多様化・複雑化していますが、企業には消費者との関係性構築がより一層重要になっています。

生活満足度とプレミアム消費の共存

コロナ禍において、景気の先行きを悲観し、収入減少を前提とした生活設計を考える人が増加する一方で、生活満足度は調査開始以来最高の78%を記録しました。

背景には、制約のある生活の中でも充実感を見出そうとする意識の変化があります。

特筆すべきは、消費スタイルの変化です。利便性重視の消費が減少する一方で、「プレミアム消費」スタイルが24%に増加しました。

自粛生活やテレワークによる時間的余裕の中で、自分の気に入った付加価値には対価を払おうとする「こだわり志向」が強まったためと考えられます。

世帯年収が維持されている中で、人々は限られた生活環境においても質の高い消費体験を求め、それが生活満足度の向上につながっているといえます。

この傾向は、必ずしも贅沢を意味するものではなく、より選択的で価値を重視した消費行動への転換を示していると言えるでしょう。

消費者マインドの主要な変化

長引く物価高騰やデジタル化の進展により、消費者の価値観と購買行動は大きな転換期を迎えています。

経済的価値を重視する賢い消費者が増加する一方で、デジタルとリアルを使い分けた新しい購買スタイルも定着しつつあるためです。

また、サステナビリティへの関心も徐々に高まりを見せるなど、消費者の意識は多様な側面で変化を続けています。

ここでは、最新の消費者調査から見えてきた3つの主要な変化について詳しく解説します。

オンラインとオフラインの融合

コロナ禍を契機に、消費者の購買行動は大きく変化し、特にオンラインとオフラインの関係性が再構築されています。

ネットショッピングの普及により、日用品や食品の購入はオンラインへとシフトする一方で、実店舗には新たな役割が求められるようになりました。

店舗には、試着や商品相談など、オンラインでは提供できない体験価値が期待されており、単なる商品販売の場から、カスタマイズサービスや空間演出を通じた体験の場へと進化しています。

また、飲食業で見られるのが、モバイルオーダーシステムの導入やデリバリーサービスの拡充など、デジタル技術を活用した非接触型のサービス提供の一般化です。

エンターテインメント分野でも、オンラインライブやイベントが新たな顧客接点として定着し、従来のリアルな体験と併存するかたちで発展しています。

オンラインとオフラインそれぞれの特性を活かしながら、シームレスに融合させていく取り組みが、今後のビジネスの重要な課題です。

コスパ重視と賢い消費選択

2024年上半期の消費者購買動向データからは、物価上昇下における消費者の賢明な選択行動が浮き彫りになっています。

購入金額は前年比101.0%と微増を示す一方で、購入数量は97.2%と減少し、平均購入単価は103.9%に上昇しています。

値上げが続く中で、消費者が購入数量を抑制しながら、必要な商品を選別して購入する傾向が強まっていることを示しています。

1回の買い物における変化を見ると、購入金額は前年比102.8%増加していますが、これは商品単価の上昇が主因であり、買い物かごに入れる商品数は減少傾向です。

消費者がコストパフォーマンスを重視しつつ、商品の選択と購入数量を慎重に判断する「賢い消費」を実践していることを表しています。

物価上昇という環境下で、消費者は単なる節約ではなく、価値と価格のバランスを見極めながら、より戦略的な購買行動をとるようになっているのです。

サステナビリティ意識の高まり

サステナビリティに対する消費者の認識は徐々に変化しており、その意味を理解できない層は年々減少傾向にあります。

しかし、実際の購買行動への影響は限定的で、7割の消費者は商品選択時にサステナビリティを意識していないのが現状です。

世代別では特徴的な傾向が見られ、60〜70代の女性シニア層の半数が関心を示す一方、働き世代の男性40〜50代では関心が低下しています。

企業のサステナビリティへの取り組みについては、約半数が応援したいと考えているものの、実際の購買行動には結びついていません。

ただし、女性を中心に「積極的に利用したい」層が増加しており、特に関心の高い女性シニア層では約2割が具体的な購買意向を示しています。

消費者の行動変容を促すためには、環境や未来への効果を分かりやすく伝え、取り組みの透明性と信頼性を高めていくことが重要です。

世代別の特徴的な消費傾向

消費者の価値観や行動様式は、年齢や性別によって以下のような異なる特徴を示しています。

  • 若年層ーデジタル時代を反映した「所有より利用」の志向が強い
  • シニア層ーデジタル活用の積極的な受容が進む
  • 女性層ー質を重視した慎重な消費傾向が顕著

こうした消費者の多様な志向は、それぞれの世代が置かれた環境や経験してきた社会変化を反映しており、今後のマーケティング戦略を考える上で重要な示唆を与えています。

以下では、各層に見られる特徴的な消費傾向について詳しく見ていきます。

若者の「所有より利用」志向

消費者の志向分析によると、若年層において「所有より利用」の傾向が特に顕著に表れています。

デジタル化が進展し、成熟した消費社会で育った20・30代の価値観を反映したものといえます。

消費者は「必要な時に必要な量だけ利用する」という合理的な考え方を持ち、レンタルやサブスクリプションサービスの活用に積極的です。

背景には、少子高齢化による将来への経済不安があり、資産形成を重視しながら効率的な消費を行う意識が強く働いています。

高品質な商品やサービスが手軽に入手できる現代では、「高級品の所有=ステータス」という従来の価値観が薄れ、より柔軟な消費スタイルが主流です。

特徴的なのは、不要品の売買にも積極的な姿勢を示している点です。

フリマアプリやリサイクルショップの利用など、モノを「所有」するのではなく「循環」させる新しい消費行動が、若年層を中心に広がっています。

シニア層のデジタル活用の進展

中高年層のデジタル活用は、コロナ禍を契機に急速に変化しています。

スマートフォンの保有率は50代で約9割、70代でも半数以上に達し、その用途も多様です。従来はパソコンで行っていた情報収集やネットショッピング、ネットバンキングなどの活動が、スマートフォンへと移行しています。

特に注目すべきは、シニア層の情報収集行動の変化です。

従来のマスメディアや店頭での情報収集から、ネット上の売れ筋情報や評価サイト、ブログなどを活用する傾向が強まっています。

オンライン診療などの新しいデジタルサービスへの適応も進んでおり、インターネットがもたらす利便性や快適さを実感する声が増えています。

一方で、個人情報の漏洩やフェイクニュースの拡散など、デジタル社会特有のリスクへの懸念も見逃せません。

シニア層のデジタル活用は利便性と安全性のバランスを取りながら、着実に進展していることがわかります。

女性の慎重消費傾向

消費者の志向分析において、女性は特に「慎重消費」の傾向が強く表れており、その特徴は商品選択の細部にまで及んでいます。

特に「モノをなるべく持たないシンプルな生活を送りたい」「モノを買う時は、品質や成分表示を十分に確認する」といった項目で、男性を大きく上回る結果となっています。

この慎重さは、単なる節約志向ではなく、より質的な判断に基づくものです。

不要なものを増やさない生活態度や、商品の品質を十分に吟味する姿勢は、家計管理への高い意識の表れです。

また「フリマアプリやリサイクルショップなどで、不要品を積極的に売りたい」意向も強く、資源の有効活用を意識した消費行動が見られます。

女性の慎重な消費傾向は、商品やサービスの選択において、より詳細な情報提供や品質保証を求める消費者ニーズの高まりを示しており、企業のマーケティング戦略にも影響します。

ビジネスへの示唆

コロナ禍を経て、消費者行動は大きく変化しています。企業がこの変化に対応し、持続的な成長を実現するためには、3つの観点からビジネスモデルを見直す必要があります。

  • ロイヤル顧客の育成
  • マルチチャネル戦略の展開
  • 価値提案の再設計

それぞれの重要性と具体的なアプローチについて解説します。

ロイヤル顧客とコミュニティの重要性 

ロイヤル顧客とは、単なる売上貢献の高い顧客ではなく、企業やブランドの商品に強い信頼を寄せている顧客を指します。

近年の消費行動の変化により、ロイヤル顧客の育成が重要視されています。

その理由は、ロイヤル顧客が外部要因に左右されない安定した顧客基盤となるためと、SNS時代において自発的な情報発信者として最高のマーケターとなるためです。

ロイヤル顧客を育成する上で「コミュニティ」が重要な役割を果たします。

コミュニティは「熱狂性」に優れ、双方向的なコミュニケーションでロイヤリティを高め、SNSは「拡散性」に優れ、認知向上に効果的です。

企業の持続的な成長には、両者を効果的に活用することが重要です。

マルチチャネル戦略の必要性

コロナ禍以降の消費者行動の変化を踏まえると、マルチチャネル戦略の重要性が一層高まっています。

現代の消費者は、商品購入前にインターネットで情報収集を行い(ZMOT)、実店舗での購入時には既に購買を決定している傾向があります。

商品やサービスを継続的に利用することでロイヤルカスタマー化し、SNSでの情報拡散につながる(TMOT)のも特徴的です。

消費者は複数のチャネルを横断しながら購買行動を行うため、企業は実店舗・ECサイト・SNSなど、あらゆる接点で一貫した顧客体験を提供する必要があります。

オンラインでの情報収集から、実店舗での購入、その後の顧客サポートまで、シームレスな体験を実現することが、持続的な事業発展には不可欠です。

価値提案の再設計 

消費者行動の変遷と現代の消費者意識を踏まえると、企業は価値提案の再設計が必要な時期を迎えています。

従来のマスメディア広告による一方通行的な価値提供から、現代では消費者自身が情報を検索・比較し、SNSでの口コミや知人の評価を重視するという変化が見られます。

特に近年は、環境意識の高まりやSDGsへの関心、コロナ禍を経て「自分にとって本当に良いもの」を選ぶ消費者が増加傾向です。

消費者行動の変化に対応するため、企業は単なる商品・サービスの提供だけでなく、環境への配慮やサステナビリティ、顧客一人ひとりのライフスタイルに合わせた価値提案が必要です。

消費者の本質的なニーズを理解し、それに応える形で自社の価値提案を見直すことが、これからの企業の競争力となります。

まとめ

コロナ後の日本の消費者行動と価値観の変化、それに対応するためのビジネスの方向性について解説してきました。

現代の消費者は、物価高への対応として賢い消費選択を行いながらも、価値を感じるものには積極的に投資する傾向があり、デジタルとリアルを使い分けた新しい購買スタイルを確立しています。

また、世代によって異なる特徴的な消費傾向も見られ、若年層の「所有より利用」志向、シニア層のデジタル活用の進展、女性の慎重な消費傾向など、多様な変化が起きています。

これらの変化に対応するために、企業はロイヤル顧客の育成、マルチチャネル戦略の展開、価値提案の再設計という3つの観点からビジネスモデルを見直すことが重要です。

このアプローチを実践することで、変化する消費者ニーズに応え、持続的な成長を実現できるでしょう。

出典①:日本人の価値観・消費行動はコロナ禍でどう変化したのか(NRI JOURNAL)
出典②:2024年上半期版 消費者購買行動変化レポート(カタリナ)
出典③:2024年度「国内消費者意識・購買行動調査」(デロイトトーマツ)

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