2021.09.02

棚割最適化と棚前行動理解の奥深い関係【プロが解説】

棚割最適化と棚前行動理解の奥深い関係【プロが解説】

本記事ではスーパーやドラッグストア等の小売店舗における棚割の最適化方法について、コニカミノルタでマーケティングデータコンサルタントを担当している清水が解説します。

棚割業務とは

棚割業務とは、インストアマーチャンダイジング(In-store Merchandising=ISM)の文脈において「シェルフマネジメント」と呼ばれ、商品特性に応じ最適な配置や陳列を行なう業務です。


一般的なチェーンストアにおいては、いわゆる「棚割ソフト」を活用して日々の業務を行っているケースが多いようです。

棚割業務にあたる方

棚割業務にあたる方は主にスーパーやドラッグストアなどのチェーンストアにおける店舗棚割担当者様や、飲料品・食料品・日用品等のメーカーにおけるブランド担当者様が多く、それぞれの立場で日々の棚割を検討されています。

本記事をご覧の方の中にも、実際に業務にあたられている、またはその業務を管理したり、効率化を管理するソリューションベンダーの方も多い事でしょう。

棚割最適化の課題

みなさんこの棚割業務を効率的にしたい、改善したい、最適化したいと日々考えられているものの、実現できていないのが現状のようです。弊社に寄せられるご相談の中でも多くの割合を占めている印象です。

ご相談の過程でお話をお伺いすると、主にこの棚割最適化の課題は以下の3点に絞られます。

  1. データが管理しきれていない(情報化の課題)
  2. 要因が多すぎる(分析の課題)
  3. 勘と経験による業務(属人化・後継者不在の課題)

順に整理して解説します。

1.データが管理しきれていない (情報化の課題)

棚割を作成するためには、次のようなデータが必要となります。

  • 商品諸元(メーカー名、商品名、仕入元、価格、etc…)
  • 配置場所(どの棚のどの段の左から何番目に何を置くか、etc…)
  • 配荷期間(いつからいつまで配荷するか、etc…)
  • 店舗諸元(どのような立地のどのような店舗か、etc…)

さらに、棚割の効率化や最適化を考える上では、その棚割にすることによってどの程度の効果を生み出したのか、ということを定量的・定性的な側面で知る必要があります。具体的には、

  • 売上(どの商品がいつどれだけ売れたのか、etc…)
  • 商品の探しやすさ(ショッパーの欲しい商品がすぐに見つかるか、etc…)
  • 見映え(整列しているか、カラーリングなど、etc…)

などです。

一般的に「データ」は数字の羅列であり、活用できる状態になって初めて「情報」と表現されます(この過程を「情報化」といいます)。

この観点で言うと、現在の棚割に関するデータが全て情報化されて活用できる状態になっていることは一般的にほとんど無く、仮に部分的に情報化されていたとしても一元的に管理されておらず、情報同士が分断されている状態が非常に多いのです。

つまり、そもそもデータを活用する段階にまで至っていない、というのが現状のように感じます。

2.要因が多すぎる(分析の課題)

一言に「最適化」といっても、「何を最適化するのか?」「その要因はなにか?」を深掘りすると、実は多くの課題が見えてきます。
「棚割最適化をしたい!」という方は、おそらく次のような世界を思い描いているものと考えられます。

  • 店舗に来店されるお客様(以降「ショッパー」)が、希望の商品を見つけられるようにしたい。
  • そのためには、ショッパーの購買決定要因のディシジョンツリーを作り、それに従って棚割を決めたい(具体的には、容量→ブランド→機能→パッケージ、といった検討順番を明確にしたい、など)。
  • それだけでは無く、新商品や思いがけない商品に触れることで、店舗における買い物を楽しいと思ってもらうとともに、店舗における購買機会を増やしたい。
  • そのために最も良い商品の配荷と棚割がどのようなものかを考えたい。具体的には、ゴールデンゾーンに売れ筋商品を置くのか、これから売りたい商品を置くのか、どちらが良いか知りたい。
  • 出来ればそのようなことが可能となるようなレコメンドの機能を持たせたい。
  • 一方で、従業員のオペレーションコストも最小化したい。具体的には欠品を検知したり補充を手早く行ったりしたい。

ここに挙げたものはほんの一部で、他にも様々な思いがあると感じています。

ところが、このような課題をまず言葉として定義し、その為の情報として何が必要なのか?を明確に理解できている担当者あるいは組織はごくわずかであるように見受けられます。


上記のような理想郷を導くためには、「データが管理しきれていない(情報化の課題)」の項目で挙げたような情報が必要になるだけでなく、それらの情報から導き出された二次情報や、それらの情報をつなぎ合わせたアルゴリズムが必要となります。

3.勘と経験による業務(属人化・後継者不在の課題)

最後に、これまでにも多く語られている「勘と経験」について述べます。
先に申し上げておきますと、「勘と経験」は決して淘汰されるものではなく、むしろ今後効率的に活用すべき「ツール」です。
熟年の棚割担当者が培ってきた勘と経験は、小売・流通業界にとっては貴重な財産であり、今後も「店づくり」において大切な観点になります。

大切なのは、この暗黙知を形式知にすることによって、広く知識を伝搬していくことにあります。
それにより、属人化や後継者不在の課題も徐々に解決されていくでしょう。

【棚前最適化への最短経路】まずは棚前で何が起こっているか?を見よう

以上3点の課題を解決するヒントとして、「まずは棚前で何が起こっているのか?」を見る、という手段があります。

実は、棚割業務の担当者様は一般的に非常に多忙であり、自分達が作りあげた棚の前でどのような購買行動が起こっているのかほぼ把握できていません。いわば、PDCAサイクルにおいてP(棚割の計画)とD(棚割変更)は行ったものの、C(結果のチェック)とA(次の棚割りへのフィードバック)が出来ていない状況です。

PDCAサイクルを回す為にも、そして上記3点の課題を解決するためにも、棚前でどのようなことが起こっているのか?を見ることが大切です。


その際に多くの棚割担当者様にお使い頂いているのが、弊社のショッパー行動解析サービス「Go Insight」(ゴー・インサイト)です。

Go Insightでは、天井に設置したカメラによりショッパー(お買い物客)の購買行動を可視化、棚前でどのぐらい滞在し、どのような商品を手に取り、どのような商品と比較検討した上で、最終的にどのような商品を購入していったのかが分かります。

こういった情報を取得出来れば、棚割が効果的に働いていたかどうかが手に取るように分かるのです。
例えば、棚割変更前と棚割変更後とで比較した際に、滞在時間が短くなっていれば、棚割変更によって商品を探しやすくなったために時間が短くなったのではないか?ということが考えられます。

まとめ

いかがだったでしょうか。
棚前で何が起こっているのかを観察すると、棚割効果の検証につながり、より魅力的で購買喚起に繋がる棚割を生み出していけると考えられます。また、勘と経験に頼りきりだった業務フローも改善していけるでしょう。

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