販売促進(販促)とは?パーチェスファネルを用いて徹底解説
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そもそも販売促進(販促)とは
まずは、販促の定義について解説します。用語の解説ではなく、販促の考え方などより専門的なことを知りたい場合は、次の章「パーチェスファネルと売上計算式に基づいた、販促の基本的な考え方」からお読みください。
言葉の定義
「販売促進」とは、自社の商品・サービスの魅力を伝え、消費者の購買意欲や売上を高める活動のことを指します。販促と略されることも一般的ですし、この言葉の元になった英語の「セールスプロモーション」がそのままカタカナ語として使われることもよくあります。
販促の施策例
販促の施策例としては次のようなものが挙げられます。
- 商品サンプルやノベルティの配布
- 期間限定ポップアップストアの出店、小売店での特設コーナー(棚)の設置
- SNSによるプレゼントキャンペーン
- 店頭やメールマガジンなどでのクーポン配信
- 「buy 1, get more」型のキャンペーン(商品を1つ買うともう1つもらえる、1つ買うと2つ目以降が割引、など)
こうした販促施策のために制作・配布されるさまざまなアイテムを「販促物」「販促品」「販促グッズ」、あるいは消費者への配布物であれば「ノベルティ」などとも呼ばれています。
販促はその他のマーケティング施策と同じく売上を増やすための投資だと捉えることができ、施策を実施することで集客や売上の向上、ひいては企業の発展に繋がる重要な活動です。
広告と販促の違い
広告も販促も「自社の商品・サービスに関する情報を世間の人々に伝え、最終的には売上につなげる」という点においては共通しており、混同されがちです。しかし広告と販促は、目的や役割が異なります。ここではその違いについて解説します。
まずは広告と販促の位置づけについて見ていきましょう。
上の図に示した通り、広告と販促はどちらもマーケティング活動の中に含まれる施策として分類することができます。ほかにも、たとえば市場調査やPR・広報、あるいはCRMなども販促や広告と並列関係にあります。
少し専門的な話をすると、ここで挙げたようなマーケティング活動は、「マーケティングオペレーションズ」と呼ばれ、「ある戦略のもとに実行されるマーケティング手法」のことを指します。この意味でのマーケティング活動は、マーケティングの4Pにおける Promotion とほぼ同義です(マーケティング戦略立案やブランドコンセプト設計といった、より上流のマーケティング活動は「マーケティングマネジメント」と呼ばれています)。
販促は Sales Promotion の訳であり、現場での略語として「プロモーション」と呼ばれることもあります。ただし、マーケティング施策の総称としての Promotion と Sales Promotion は別の意味だということを知っておきましょう。
現場レベルにおける広告と販促の役割分担
広告は、テレビや新聞、雑誌、Webなどの媒体を利用して、あくまでも自社や製品について知ってもらうこと=認知獲得を目的としています。
それに対して、販促は買ってもらうこと=購買が目的です。
そのため、情報を知ってもらうだけではなく、集客や売上増加という成果を出す施策が求められます。
こうした考え方の違いから、上の施策例で紹介したようなクーポンやノベルティといった、購入へのインセンティブを与える取り組みを行うことが一般的です。
消費者が商品に対する何らかのニーズや課題を持ち、最終的に購買に至るまでの流れを、マーケティングの実務では「パーチェスファネル」(ファネル)と呼ばれるモデルで整理することがあります。
このファネルにあてはめて考えると、広告と販促が受け持つフェーズの違いを理解できます。広告は主に、ファネルの「認知」「興味」「理解」の部分を担い、販促は主に「理解」「検討」「購買」といったファネル後半部分の施策です。
商品特性によって変わる、広告と販促の役割
広告と販促がどちらも「理解」の部分をカバーする理由は、たとえば日用品や菓子など、比較的安価で店頭でどれを買うか意思決定がされやすい商品ジャンルであるためです。このような商品では、事前に広告を見ていなくても店頭のPOPなどの販促によって(認知・興味→)理解→検討→購買のプロセスが一気に促されることもあります。
逆に自動車や大型家電、家など、商品理解から購買までに一定以上の時間を要する場合は、広告と販促の役割がはっきりと分かれる傾向にあります。自動車を例に取れば、テレビCMなどの広告は本社のマーケティング部が主導し、ディーラー(ショールーム)来店時のノベルティ配布に代表される販促は各地域の販売会社が担っています。
パーチェスファネルと売上計算式に基づいた、販促の基本的な考え方
ここからは販促活動における、具体的な考え方について考えていきます。
上の図は、前の章でも紹介したパーチェスファネルです。マーケティング施策を行う上では、このような段階分けを行い、その段階ごとにKPIを設け、効果検証や現状把握を行うことが効果的です。
たとえば仮に「売上目標に届かなかった」という結果が出た場合も、こうしたKPIの設計ができていれば、「何が原因で」売上目標に届かなかったのかを分析することができます。
販促を行う上で知っておきたい「売上の公式」
この考え方を踏まえて、販促施策を行う際に知っておきたい、売上の計算式の一例を紹介します。この式を理解していることで、売上高を決定する変数(要因)を分解することができ、そのうち販促がどの変数に影響を与えられるのかを知ることができます。
売上の計算式(例)
[売上=市場における消費者の数×商品の認知率×配荷率×購入率(新規+リピート)×商品単価]
この式に出てくる変数のうち、販促担当者がコントロール可能でインパクトのあるのは太字の2つです。販促企画に限らず、こうした前提になる公式や理論をもとにして、その施策がどんな目的を果たすべきかを関係者の共通認識にすることが重要です。販促活動においては、「商品の認知率」「購入率」の上昇を目的にすると良いでしょう。
なかでも、購入率は最も重要な変数です。認知率は広告投下や新商品時の棚取り(営業活動)などで一時的な上昇をつくることができます。そうした追い風を利用しながら売上をできるだけ安定化させるためには、商品そのものの実力もさることながら、トライアル促進やリピート促進のための販促活動がカギとなります。
太字にしていない要素についても少し解説すると、「配荷率」はいわゆる流通対策などによって高めることができますが、営業担当の活動による要因も大きいといえます。また、「商品単価」は期間限定価格やセット割引など、部分的には販促施策の一環として変えることも可能です。ただし、容量変更や定価変更などの対応は、基本的には販促施策の範囲外だと考えて良いでしょう。
2つの変数を改善するための具体的な販促施策
前章に続いて、販促活動で目的とすべき、商品の
- 認知率
- 購入率
の改善について詳しく紹介していきます。
なお、このときに知っておきたいポイントとしては、1つの施策が1つの変数(認知率や購入率)だけに影響を与えるわけではない、ということです。
たとえば店頭のPOPを用意した場合も、その内容(クリエイティブ)によっては認知率と購入率どちらも高められる場合もあります。逆の例を挙げれば、たとえば同時期にテレビや新聞で展開していた広告が何かの理由で批判の的になり、店頭で積極的な販促施策をしていても思ったような購入率アップにつながらない、といったことも考えられます。
認知率
認知率の向上は、「広告と販促の違い」でも触れたように広告が担う役割でもあります。
そのため、マスメディアなどを活用した認知率の向上は広告の範疇と考えることができ、主に店頭での認知施策や、デジタルの販売チャネルの場合はECサイト流入を目的とした広告などの各種施策が販促における認知率向上のスコープになります。
実際に使われることの多いメディアとしては、次のようなものがあります。
- 店頭の棚やPOP(商品説明カード、のぼり、リーフレット)
- 商品パッケージに貼るステッカー
- DM、ビラ(ポスティング)、チラシ
- 街頭、店頭での商品サンプリング
- web広告(検索連動型の広告、SNS内の広告、ディスプレイネットワークなど)
購入率
購入率アップを考える場合は、新規とリピートで分けて考えると良いでしょう。
新規購入
新規購入とは、「一定の期間内で初めてその商品を購入した人」を指します。この期間は6ヶ月や12ヶ月、あるいはさらに長い期間など、企業ごとのマーケティングの考え方によって変わります。
新規購入については、特に店頭やECサイトなど、いわゆる「買い場」や「売り場」と呼ばれる場所での働きかけが効果的です。
一部は認知率アップの施策と重複しますが、具体的な手法としては次のようなものが考えられます。
- 店頭の棚やPOP(商品説明カード、のぼり、リーフレット)
- 商品パッケージに貼るステッカー
- 店頭での実演、サンプリング
- お試し価格
- お徳用サイズや、「もう1つもらえる」などの増量
- ノベルティ配布(おまけ付きパッケージなども含む)
- 「レシートを撮ってもらえる」型のプレゼントキャンペーン
- web広告(リマーケティングと呼ばれる、ECサイトなど任意のページを訪れた人に向けた広告)
リピート購入
リピート購入とは、「一定の期間内でその商品を2回以上購入した人」を指します。新規購入と同じように、この期間の設定の仕方は企業のマーケティングの考え方によって変わります。
リピート購入については、商品やブランド全体の視点で考えるならば、商品力なども当然問われます。しかし、いわゆるコモディティと呼ばれるような商品ジャンルでは、差別化が難しいこともあります。その意味で、販促施策によってリピート購入を促すことは非常に重要です。
特に、ノベルティや割引といったインセンティブによって、「もっと買うとお得」というイメージを持ってもらえるような施策は、リピート購入促進に効果的でしょう。
具体的な手法としては、次のようなものが考えられます。
- 「集めて応募」型のプレゼントキャンペーン(複数買うことで応募ができるキャンペーン)
- EC会員向けのポイント付与、クーポン配布
- 時季に合わせたダイレクトメールやメールマガジン
販促における効果検証の3つポイント
販促においても、他のマーケティング施策と同じように、実施後の効果検証が欠かせません。効果測定の方法、次の施策に生かすための検証方法についても、必ず“事前に”考えておくことが重要です。
なぜ事前に考えておくことが重要かというと、そのほうが長期的に施策の精度が高めやすいからです。
もし仮に効果検証について考えないまま販促施策を行い、会議などの前に慌てて振り返りを行ったとします。この場合、社内の報告としては一旦形にすることができたとしても、次のようなことが現場では分からなくなってしまう、あるいはその時の担当者の記憶頼みになってしまいます。
- 何を狙った施策なのか(初回購入率アップなど)
- その狙いは、どのように測ることができるのか(POSやアンケート、ECのアクセス解析など)
- 施策の実施前はどのような状況か(前後比較をするため)
施策の内容が決まったタイミングで上のようなことをまとめておき、仮に担当者が変わったとしても思考過程や経緯が分かるようにできると理想的です。
特に②については、狙いによっては必ずしも数値化できない場合があることや、計測するためのツールやデータなどを購入する必要があるケースもあります。
リアル店舗の場合の効果検証ツール
販促施策の中でこれまで数値化が難しいとされてきていた部分として、購買前のショッパーの購買行動データがあります。購買後のデータについては小売店のPOSデータを購入するなどで把握することができましたが、購入した理由・しなかった理由については、従来であれば把握できる定量的なデータがなく、担当者の勘や経験で仮説立てを行っていました。
しかし昨今は、店舗内のカメラの画像解析などによって、レジよりも手前の行動をデータとして計測することができるようになってきています。
弊社では、リアル店舗でのショッパー行動を可視化し、販促活動をよりデータに基づいた仮説検証やPDCAをサポートするためのショッパー行動解析サービス「Go Insight」を提供しています。
このサービスでは小売店にAIカメラを設置し、自社商品が並べられている棚付近での消費者の行動を測定・解析=データ化することができます。さらに、そのデータをもとにした分析を専門のコンサルタントが行い、販促施策の仮説検証や改善案を提案することができます。
関連記事:【消費財メーカー必見】科学的なデータに基づく”売り場づくり”とは
販売促進の事例
最後に、販売促進施策の事例を紹介します。
詳しい事例についてはこの章の末尾で紹介するダウンロード資料の中で触れていますが、販促によって売上を伸ばした事例には次のようなものがあります。
広告と販促の連動+分析ツール活用で棚前での訴求を最適化
ある食品メーカーでは、テレビCMで訴求しているメッセージと連動した販促物を制作しました。
さらにツールを利用しながら店頭での棚前行動を分析して「販促物の最適な設置場所がどこか」を判断。テレビCMで認知を最大化させながら、店頭の棚でも目に付きやすい場所で興味喚起に成功し、売上げアップを実現させました。
ソーシャルメディアでの話題化と、キャンペーンによる継続接点獲得
ある飲食チェーンでは、子供に人気のキャラクターとコラボした限定メニューを開発しました。コラボメニューの売上を最大化するため、ソーシャルメディアでの広告配信と、店舗来店者だけが応募できるプレゼントキャンペーンをあわせて実施。
キャンペーンの応募には、来店者に自社のソーシャルメディア公式アカウントをフォローしてもらうことと、当該商品を購入したレシートを写真に撮って公式アカウントに送ってもらうことを条件にしました。
これにより、広告でキャンペーンのことを知った顧客が店舗に訪れ、さらに自社のソーシャルメディアをフォローさせることにより、継続的な接点の獲得にも成功しました。
≫店舗での販促施策に特化した、より詳細な事例についてはこちらの資料をダウンロードしてご覧ください。
まとめ
この記事では販促の定義や位置づけを解説しながら、具体的な販促施策の考え方について紹介しました。
販促はメーカーや小売企業にとって重要かつ、実施がマストな施策の一つです。
そのせいもあって、過去に実施されてきた手法やKPIが特に検証されることもなく、そのまま現在も継続されているケースもあります。
ただ前例踏襲をするのではなく、販促の目的や得たい効果を明確化させ、目的に連動したKPIや効果検証方法を設計することが、より良い効果をもたらすことにつながります。
記事で紹介した考え方をもとに、あらためて自社の販促施策を見直すことで、新たな発見や改善点をぜひ探してみてください。